心が動くものを集める
『The Herbcrafter’s Tarot(ハーブクラフターズタロット)』は、植物と人との関わりを通してタロットの世界を描いたカードです。
一般的なタロットとは少し違うこのカードを、植物のこと、描かれているもの、そして私自身が感じたことから読み解いてみます。
今回は、大アルカナ 「0. The Fool」。
描かれている植物は、DANDELION(タンポポ)です。
このカードを初めて見て、何を感じますか?
緑豊かな大地の上に、バスケットがひとつ。
中にはたくさんのタンポポの花が、一つずつ丁寧に並べられています。
そのまわりには、花を守るようにタンポポの葉が置かれています。
そしてバスケットの上下左右には、まるで羅針盤のように石が置かれています。
人物は描かれていません。
けれど、このタンポポを摘み、ここに並べた「誰か」がいる。
このカードをながめていると、タンポポを摘んでバスケットに入れたのはどんな人だったのか、摘んだタンポポをどうしようとしたのか、そんな背景がだんだんと見えてきます。
なぜThe Foolにタンポポなのでしょう
春になると、身近な場所で黄色い花を咲かせるタンポポ。
花が終わると綿毛になり、種は風に乗ってさまざまな場所へ運ばれていきます。
どこへたどり着くのか、種自身には分かりません。
それでも、風に身をまかせて新しい場所へ向かいます。
タンポポは、踏まれやすい場所や厳しい環境でも見かける、とてもたくましい植物です。
決して派手な花ではありません。
つつましく、どこかいじらしく、それでいて力強い。
私はタンポポを見ると、
「どんなところへ行っても、私は私の場所を見つけるよ」
と言っているように感じることがあります。
そんな姿が、まだ見ぬ世界へ向かう「The Fool」に重なります。
ウェイト版のThe Foolと比べてみると
ウェイト版のThe Foolには、崖のすぐそばを歩く若者が描かれています。
足元には危険が迫っているのに、若者はどこか楽しそう。
そばにいる犬が何かを知らせようとしているようにも見えます。
私がこのカードから感じる言葉は、
「落ちちゃってもいいじゃない。そこは素敵なところかも」
です。
先のことばかり考えていたら、なかなか一歩を踏み出せません。
行ってみたら、思いもよらなかった世界が待っているかもしれません。
ハーブクラフターズタロットのThe Foolはどうでしょう。
タンポポは、すでに摘み取られています。
そのまま大地に生えていれば、やがて綿毛になり、種を飛ばし、新しい場所で芽吹いたかもしれません。
けれど、その未来は絶たれてしまいました。
さあ、このタンポポたちは、どうなってしまうのでしょう。
私はこのThe Foolをこう読みます
カードの主人公であるハーブクラフターは、なぜタンポポの花や葉を摘み取ったのでしょう。
私は、
「気になる。摘んでみたい」
そんなふうに心が動いたところから始まったのではないかと思うのです。
最初から立派な計画があったわけではない。
けれど、ただ無造作に摘んだわけでもなさそうです。
花と葉はバスケットの中に丁寧に並べられ、そのまわりには石や小さなポーチが置かれています。
きっと今、
「このタンポポ、どうしようかな」
と考えている。
そんな瞬間を描いたカードのように、私には見えます。
摘み取られたタンポポは、もうその場所で綿毛になって種を飛ばすことはできません。
けれど、そこで何もかも終わるのでしょうか。
タンポポは昔から、地域や文化によって葉や根などが食用やハーブとして利用されてきました。花を押し花にすれば、美しい姿を残すこともできます。
土の上で種をつなぐ未来とは違っても、人の暮らしの中で別の役割を持つことができる。
私はこのカードに、そんな「もう一つの命のつなぎ方」を感じます。
最初に思い描いていた道から外れてしまっても、そこから別の道が始まることがある。
予定どおりに進まなかったからこそ、初めて見つかるものもある。
それが、このカードが伝えたいことなのではと思うのです。
子育て中のお母さんが、このカードを引いたなら
お子さんが不登校になり、「この先どうなるのだろう」と悩んでいるときに、このカードが出たなら。
少しだけ未来の心配から離れて、「この子は今、何に心が動いているんだろう?」と見てみるのもいいかもしれません。
絵を描くことが好き。
ゲームに夢中になっている。
虫のことなら何時間でも調べている。
好きな音楽を聴いているときだけは楽しそう。
大人から見れば、将来何の役に立つのか分からないこともあります。
けれど、それは今、その子が夢中になって集めている「タンポポ」なのかもしれません。
このカードのハーブクラフターも、摘んだタンポポをこれからどうするのか、まだ決めていないように私には見えます。
まずは、心が動いたから集めてみた。
そして、集めたものを眺めながら、「さて、これをどうしようかな」と考えている。
今は何につながるのか分からなくても、夢中になって集めたものが、いつか思いもよらない形でその子の力になることがあるかもしれません。
「あなたは今、何を集めているの?」
The Foolのタンポポは、子どもの心が動いているものに目を向けてみようと、そっと教えてくれているような気がします。
タンポポの基本情報
英名: Dandelion
学名: Taraxacum officinale など
科名: キク科
生活型: 多年草
地面に葉を広げるロゼット状の姿が特徴で、春には黄色い花を咲かせます。花のあとにできる種には綿毛があり、風に乗って運ばれます。
西洋では古くから葉や根などが食用やハーブとして利用されてきました。
身近な場所で出会える小さなタンポポ。
今度見つけたときには、少し立ち止まって眺めてみてください。
その一輪が、「ここからどこへ行こうか」と、新しい旅を始めようとしているのかもしれません。
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