秋が深まり、朝晩の空気にひんやりとした冷たさを感じるようになりました。
散歩をしていると、庭先や公園で白や黄色の菊を見かける季節です。
菊は日本人にとって、とてもなじみ深い花。
仏花として飾られることも多いですが、古くから長寿を願う行事や、季節を楽しむ文化とも深く関わってきました。
今回は、【七十二候】菊花開(きくのはなひらく)。
菊という植物の特徴や日本の文化とのつながり、そして伝統色「白橡(しろつるばみ)」についてご紹介します。
秋の草花を眺めながら、心と体にも目を向けてみましょう。
【七十二候】菊花開(きくのはなひらく)
【七十二候】菊花開は、【二十四節気】寒露の次候にあたり、毎年10月13日頃から17日頃までの季節です。
その名のとおり、菊の花が咲き始める頃を表しています。
菊はキク科の多年草で、古くに中国から日本へ伝わったとされています。
現在では、さまざまな色や形の園芸品種があり、秋の庭園を美しく彩っています。
白、黄色、桃色、赤紫色。
花びらが幾重にも重なる大輪の菊もあれば、小さな花をたくさん咲かせる菊もあります。
同じ菊でも、ずいぶん表情が違いますね。
菊の花は、小さな花の集まり
菊の花を近くで観察したことはありますか。
実は、私たちが一輪の花だと思って眺めている部分は、たくさんの小さな花が集まったものです。
このような花の集まりを「頭状花序(とうじょうかじょ)」と呼びます。
例えば、中心に小さな筒状の花が集まり、その周囲を花びらのような舌状の花が取り囲む種類があります。
これはヒマワリやタンポポなど、キク科の植物に共通して見られる特徴です。
ただし、園芸品種の菊には舌状花が多く、中心の筒状花が見えにくいものもあります。
一輪の菊の中に、たくさんの小さな花がある。
そう知ってから眺めると、いつもの菊も少し違って見えてきます。
菊と重陽の節句
菊は、中国で古くから長寿や健康への願いと結びついてきた植物です。
その文化は日本にも伝わり、平安時代には宮中で菊を楽しむ行事が行われていました。
代表的なのが、9月9日の「重陽の節句(ちょうようのせっく)」です。
中国の陰陽思想では、奇数は陽の数とされ、その中でも最大の一桁の奇数である「9」が重なる日を重陽と呼びます。
重陽の節句は、菊の節句とも呼ばれ、菊の花を飾ったり、菊酒を楽しんだりして、健康や長寿を願う日として親しまれてきました。
また、菊の花に綿をかぶせて露を含ませる「菊の被綿(きせわた)」という風習も知られています。
菊の香りや露を含んだ綿で身をぬぐい、長寿を願ったと伝えられています。
旧暦の9月9日は、現在の暦では秋の菊が美しい時期にあたることが多く、季節の花と行事が結びついていたことが分かります。
花を眺めるだけでなく、そこに願いを込めていた昔の人々。
菊という花が、どれほど大切にされてきたのかが伝わってきますね。
白橡(しろつるばみ)|秋の穏やかな光を思わせる色
今回選んだ日本の伝統色は「白橡(しろつるばみ)」です。
白橡は、灰色を帯びた淡い黄褐色。
柔らかく、落ち着いた温かみを感じる色です。
「橡(つるばみ)」は、クヌギなどのドングリを指す言葉で、古くから染色にも利用されてきました。
ドングリに含まれるタンニンなどを利用した染色では、媒染の方法によって茶色や灰色を帯びた色合いが生まれます。
白橡という色名にも、植物を利用して色を生み出してきた日本人の暮らしが感じられます。
秋の日差しを受けて淡く色づいた草木。
乾き始めた落ち葉。
柔らかな光に包まれた白い菊の花。
そんな秋の風景を眺めていると、白橡のような穏やかな色を見つけられそうです。
鮮やかな紅葉も美しいけれど、こうした控えめな色にも秋らしさがありますね。
秋の深まりと、心と体の整え方
菊花開の頃は、朝晩の冷え込みが少しずつ強まり、空気の乾燥も気になり始める季節です。
昼間は過ごしやすくても、夕方になると急に肌寒く感じることがあります。
中医学では、秋は「肺」と関わりが深い季節と考えられています。
ここでいう「肺」は、現代医学でいう肺という臓器だけを指すものではなく、呼吸や皮膚などにも関わる伝統的な概念です。
また、秋の乾燥は「燥(そう)」と呼ばれ、体の潤いを大切にする養生が伝えられてきました。
そんな秋に意識したいのは、毎日の小さな習慣です。
朝晩の冷えに合わせて、衣服を調整する。
喉の渇きを感じる前にも、適度に水分をとる。
夜は照明を少し落として、ゆったりと過ごす。
そして、自分が疲れていると感じたら、休む時間を作る。
季節の変化を感じるように、自分の体の変化にも目を向けてみたいですね。
季節のハーブとアロマの提案
秋の夜が少しずつ長くなるこの季節。
温かいハーブティーや、お気に入りの香りを楽しむ時間を作ってみませんか。
ハーブ|温かいお茶でひと休み
ジャーマンカモミール
リンゴを思わせる、甘く優しい香りが特徴です。
古くからハーブティーとして親しまれてきました。
一日の終わりに、温かいカモミールティーを飲みながら、ゆっくり過ごすのもよいですね。
キク科の植物なので、キク科アレルギーがある方は注意が必要です。
レモンバーム
レモンに似た爽やかな香りを持つ、シソ科の植物です。
葉をお茶にすると、穏やかな風味が楽しめます。
気分を切り替えたい午後のティータイムにも似合います。
菊花茶(クリサンセマム)
中国では、菊の花を乾燥させた菊花茶が古くから親しまれています。
中医学では、体にこもった熱や目の不調などに対して伝統的に用いられてきました。
菊花茶に利用される菊は、観賞用の園芸菊とは用途や品種が異なる場合があります。
飲むときは、食用として販売されているものを選びましょう。
こちらもキク科の植物なので、アレルギーのある方は注意してください。
アロマ|秋の時間に寄り添う香り
ゼラニウム
バラを思わせる華やかな香りに、青々とした葉の香りが重なります。
落ち着いて過ごしたい夜や、手帳を書く時間に楽しみたい香りです。
ベルガモット
柑橘系の爽やかさと、ほのかな甘さが特徴です。
秋の午後、読書をしたり、好きな音楽を聴いたりするときにもよく似合います。
サイプレス
すっきりとした針葉樹の香りが特徴です。
森の中を歩いているような、清々しい雰囲気を楽しめます。
精油を使用するときは、原液を直接肌につけず、適切な方法で使いましょう。
特にベルガモットの圧搾精油には光毒性があるため、肌への使用後に日光を浴びる場合は注意が必要です。
ハーブや精油は、体質や服薬状況などによって使用上の注意が異なります。香りを楽しむ際にも、無理のない使い方を心がけたいですね。
自分のために、静かな時間をつくる
菊の花を眺めていると、一つひとつの小さな花が集まって、美しい姿を作っていることに気づきます。
私たちの毎日も、小さな出来事の積み重ねですね。
家族のために食事を作ったこと。
仕事で誰かの役に立てたこと。
散歩の途中で、美しい花を見つけたこと。
忙しく過ごしていると、そんな出来事を振り返る時間も少なくなりがちです。
一日の終わりに、温かいお茶を飲みながら、今日のことを思い出してみる。
そして、手帳に一つだけ書いてみるのもよさそうです。
「今日、うれしかったことは何だろう」
「心が穏やかになったのは、どんなときだったかな」
「明日は、どんな時間を大切にしたいだろう」
自分の気持ちを言葉にすることで、今の自分が何を感じているのか、少しずつ分かってくることがあります。
秋の菊を眺めるように、自分の心にもゆっくり目を向けてみたいですね。
まとめ|菊の花とともに、秋の深まりを感じて
七十二候「菊花開」は、菊の花が咲き始める頃。
古くから長寿や健康への願いと結びつき、日本の秋を彩ってきた花です。
そして今回の伝統色「白橡」は、秋の柔らかな光や、少しずつ色づく草木を思わせる穏やかな色。
季節の草花を観察したり、温かいお茶を楽しんだり、今日の出来事を手帳に書き留めたり。
そんな小さな時間を重ねながら、秋を楽しんでいきたいですね。
今日、あなたはどんな秋の景色に出会いましたか。
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