秋になると、風がやわらぎ、空が高くなります。
古くから日本人は、その変化の中に「美しさ」と「もの悲しさ」を感じ取り、草花に季節の心を重ねてきました。
そんな中で生まれたのが――秋の七草。
春の七草が「食べて無病息災を祈る」のに対して、秋の七草は「眺めて心を癒やす」もの。
食ではなく感性を養う文化だったのです。
この七草を詠んだのは、万葉集の歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)。
彼はこう詠みました。
秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花葛花 瞿麦の花 姫部志 女郎花 また藤袴
およそ1300年前の人が、「秋の野に咲く花を指折り数えた」――
ただそれだけのことが、今も私たちの季節感として生きている。
それが、秋の七草の始まりです。
秋の七草とその意味
花の名前 | 読み方 | 象徴・特徴 |
---|---|---|
萩 | はぎ | 風にゆれる可憐な花。はかなさと再生の象徴。 |
尾花 | おばな(すすき) | 月夜に映える穂。潔さと実りを表す。 |
葛 | くず | 力強く伸びるツル。生命力と再生。 |
撫子 | なでしこ | 可憐で優しい花。母性と慈しみ。 |
女郎花 | おみなえし | 甘い香りを放つ黄色い花。女性的な優雅さ。 |
藤袴 | ふじばかま | 風にゆらぐ薄紫の花。上品な香りと祈りの象徴。 |
桔梗 | ききょう | 五角の星の花。誠実・変わらぬ心。 |
覚え方
「ハギ・キキョウ クズ・オバナ ナデシコ・オミナエシ フジバカマ」
リズムよく声に出してみると、和歌のように自然に入ります。
また、情景で覚えるならこんな風に。
萩に風、桔梗に星、葛はつる、尾花なびいて撫子ほほえむ、女郎花香りて藤袴ゆらぐ。

- 萩は風にそよぎ
- 桔梗は星のように咲き
- 葛はツルをのばし
- 尾花(すすき)は風になびき
- 撫子はそっとほほえみ
- 女郎花は香りを放ち
- 藤袴は風にゆらぐ
すべて「動き」と「香り」で覚えると、秋の景色がそのまま浮かびます。
秋の七草がくれる、心の静けさ
七草の文化は、忙しさの中で心を鎮めるための“間(ま)”を作る知恵でもあります。
秋の風を感じながら、こんな過ごし方をしてみてください。
- 朝、窓を開けて深呼吸。金木犀や草の香りを感じる。
- 散歩中に咲く草花に目を向けて、名前を調べてみる。
- 夜は照明を落として、お茶をいれ、静かに月を眺める。
- 手帳やノートに「今日、美しいと思ったもの」を一つ書く。
自然を見つめると、心の動きも見えてきます。それが“秋を眺める”ということ.
🌙 おわりに
秋の七草は、花そのものよりも、「花を通して季節と心を感じる」ためのもの。
見て、香って、心で味わう——
そんな静かな贅沢を、今夜ひととき味わってみませんか。
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