風の時代を、自分のリズムで歩く
ここ十数年、「ありがとうを毎日言おう」「良かったことを3つ書こう」
そんな言葉をよく見かけるようになりました。
自己啓発本のタイトルも、明るく前向きなものが並びます。
実は私も、そういった本に強く惹かれた時期がありました。
“変わりたい”という気持ちを抱えて、いくつか実践してみたこともあります。
けれど、どれも途中で終わって、いつの間にか忘れて、また違う自己啓発本を買っての繰り返しでした。
その本をきっかけに人生が変わった人もいるでしょう。
私は、自己啓発本を否定したいわけではありません。
むしろ好き。
「私も変われるかもしれない」と思わせてくれる、そんな希望を灯す存在だと思いますし、今でも本屋に行くと惹かれるように手に取ってパラパラとめくっています。
でも、もし何冊も買い続け、やり方を探し続けているのなら、もしかすると必要なのは「やり方」ではなく、心のあり方──根本を見つめることかもしれません。
ポジティブ心理学という原点
自己啓発の多くは、もともと心理学の流れをくんでいます。
特に2000年代に注目された「ポジティブ心理学」。
これは、「どうすれば人はより幸せに生きられるか」を科学的に研究する心理学で、“マイナスをゼロにする”よりも、“ゼロをプラスにする”考え方。
感謝、希望、レジリエンス(心の回復力)など、心を健やかに保つ「力」を育てることを目的としています。
けれど日本に入ってくる過程で、その本来の理念が少しずつ形を変えました。
「書くだけで」「願うだけで」「神様に愛される」など、スピリチュアルや願望実現と混ざり合い、手軽に“幸せを買えるような方法論”として広まったのです。
本来のポジティブ心理学が伝えたかったのは、「感謝を書けば現実が変わる」ではなく、
「感謝を書くことで、ものの見方が変わり、行動が変わり、結果が変わる」ということ。
つまり、“幸せになる力は誰の中にもある”という視点。
「根」を見つめるということ
人は誰でも、もっと豊かになりたい、もっとよく生きたいと願います。
その気持ちは悪いことではなく、むしろそれこそが「生きている証」だと思うのです。
ただ、枝先ばかりを整えても、根が乾いていれば花は咲かない。
私がハーブクラフターズタロットと出会って感じたのは、
変化とは“根に水をやるようなもの”だということでした。
カードに描かれた植物たちは、いつも静かに語りかけてきます。
「焦らなくていい」「どの道もあなたの一部」
そんな優しい声に耳を傾けるうちに、無理にポジティブにならなくてもいいんだ、と気づきました。
Seven of Water × BIRCH 迷うことも、生きること
このカードには、幹がいくつも伸びる白樺の姿が描かれています。
どの幹も違う方向を向いているけれど、根はひとつ。
迷うことも、寄り道も、すべてがその根から伸びた証。
私たちは、どの幹を選んでも自分自身から離れることはありません。
“変わる”とは、新しい自分になることではなく、すでにある自分の中の声を聞き取ること。
自己啓発が“空の風”だとしたら、ハーブクラフターズタロットは“大地の風”。
どちらも大切だけれど、私はこの風に耳を澄ませながら、今日も少しずつ、自分という木を育てていきたいと思います。
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